環境にやさしい新ノートブランド「COCOCHY」の魅力（後編）
〜開発担当者に聞くブランドストーリー〜
マルマンが発表した新しいリングノートブランド「COCOCHY（ココチィ）」。「COCOCHY（ココチィ）」は「使う人にも、環境にもやさしい。心地いいリングノート」をコンセプトに、使うことでサステナブルな活動が実践できるノートを目指して開発されました。環境と使う人へのやさしさに加えて、品質のよさや手に取りやすい価格帯を兼ね備え、リングとノート本文用紙の分別廃棄が手軽にできる新設計の「リング開き」が付属しています。前編に続く後編では、開発に携わった設計チームの細井祥一朗さんとデザインチームの山村奈月さんに、「COCOCHY（ココチィ）」が生まれるまでの背景についてお伺いしました。
「COCOCHY（ココチィ）」はA5サイズとB5サイズで展開。ライトオレンジ、イエロー、ライトグリーン、ライトブルー、ライトパープル、グレーの全6色です。
「環境への配慮」はこれからのノートの価値になる
「COCOCHY（ココチィ）」はどのような思いのもとで、開発されたのですか？
細井：マルマンではさまざまなノートブランドを展開しているのですが、「汎用性の高い低価格帯のノート」と呼べるノートがなかったんですね。そこでより多くのお客さまに手にとっていただけるリングノートをつくろうという思いのもと、開発がスタートしました。
とはいえ単に「汎用性の高い低価格帯のノート」を目指したわけではありません。紙にこだわりをもつマルマンならではの品質のよさは担保しつつ、そこにプラスアルファの価値を加えたノートをつくりたいと考えました。
設計チームの細井祥一朗さんとデザインチームの山村奈月さん。製品の開発において、マルマンでは常に「お客さまが第一」なのだそう。
「プラスアルファの価値」というと、ノートを使うことでサステナブルな活動につながる「環境への配慮」になるのでしょうか。
細井：おっしゃる通りです。現在、SDGs（持続可能な開発目標）が社会的に推進されていますが、かねてよりマルマンは環境への取り組みを進めてきました。紙製品を手がけるメーカーだからこそ、森林や地球環境の保全に配慮するのは当たり前のこと。マルマンでは再生紙を積極的に採用するほか、製紙会社と協力して計画的に栽培された植林木を原料とする活動、「マルマン・アートの森」と名付けた広葉樹の植栽、本社や工場へ太陽光発電システムの導入、生産・流通段階におけるCO2抑制や省資源化など、さまざまな取り組みを行なっています。
また近年は学校教育の現場でも、環境教育が盛んに実施されていますよね。低年齢層を含めた環境への意識の高まりや社会的背景を踏まえ、環境へのやさしさをひとつの価値とするノートこそ、いまマルマンがつくるべきノートだと考えたんです。
「COCOCHY（ココチィ）」のコンセプトが固まる前につくられたノートのプロトタイプ。
なるほど。「COCOCHY（ココチィ）」ではFSC®︎認証を取得した本文用紙と表紙を採用しています。「COCOCHY（ココチィ）」についたFSC®︎のマークは、マルマンの思いのあらわれでもあるのですね。
山村：FSC®︎のマークは、製品に使われている原材料が責任をもって調達されていることを意味します。豊かな森を守るため、森林の管理は必要不可欠。「COCOCHY（ココチィ）」に限った話ではなく、FSC®︎マークのついた製品を選ぶことが、日々の生活が森の保全へつながっていくのだと感じています。
「COCOCHY（ココチィ）」の本文用紙は、FSC®︎認証のマルマンオリジナル筆記用紙。紙表面が滑らかで、書きやすさを実感できます。
分別廃棄がしやすくなる「リング開き」の制作秘話
「COCOCHY（ココチィ）」の裏表紙には、リングとノートの本文用紙を取り外せる「リング開き」のパーツが付属しています。これは「COCOCHY（ココチィ）」の大きな特長でしょうし、非常に画期的なアイデアですね。
山村：ノートはリサイクルできる貴重な資源です。しかしリングノートを資源ごみに出すには、リングとノートの本文用紙を分別しなければならず、これがなかなかの手間になるんですね。「リング開き」のパーツを付属させることで、気軽に分別をしていただけるようになったらいいなと思っています。
パーツは花の形になっており、裏表紙から取り外して折りたたむことで「リング開き」が完成します。ですがこの形と折り方にたどり着くまでがとても大変でした……。リングを開くパーツを裏表紙に付けるのは細井のアイデアだったのですが、紙をどんな形にしたらリングが開くのだろうと、何も分からない状態からのスタートだったので（笑）。
「リング開き」のパーツは花の形。人と自然が共生する、未来への思いが込められています。「リング開き」は特許出願中です。
細井：「COCOCHY（ココチィ）」は環境にやさしいノートですから、廃棄のことまでしっかりケアしたいと思ったんです。
市販されているものは主にプラスチック製ですよね。「COCOCHY（ココチィ）」の表紙は、「FSエリプラ＋（プラス）」という紙の素材。紙でもできるという確信があったのでしょうか？
細井：「COCOCHY（ココチィ）」はひとつの穴に2本のリングが入ったツインワイヤ製本です。表紙にはそこそこの厚みがあるので、折りたためばツインワイヤ製本のノートも取り外せるはずだと。「リング開き」のアイデアは、確信というより設計の仕事に携わるなかで培った直感ですかね。そこから試作・検証を重ねていった結果、形となりました。アイデアを具現化してくれたデザインチームに感謝しています。
「きちんと分別廃棄ができれば、ノートを使い終わったあとまで心地よさを感じられるのではないでしょうか」と細井さん。
山村：絶対に具現化させなければ、の思いで試行錯誤を繰り返しました。何かしらをモチーフにしたいとは考えていて、当初は象やハートといった形をベースにしていたんです。しかし途中で紙が折れてしまったり、リングが開かなかったりと、本当に苦労しましたね。
細井：先端はリングに挿し込めるよう鋭く、その先はリングを開くための厚みが必要なんですね。山村をはじめとするデザインチームのメンバーが、すごくがんばってくれたんです。
「リング開き」の試作品の数々。完成にたどり着くまで、長い道のりだったそうです。
山村：「リング開き」のことだけを考えるなら、表紙をもっと厚くするという選択肢もあります。ですが全体的なデザインのバランスを考慮すると、表紙の厚みは現在のものがベスト。試作を重ね、最後の最後でマルマンの生産本部長から的確なアドバイスがあり、ようやく完成にこぎつけました。
「リング開き」はみなさんが一致団結してつくりあげた、努力の結晶でもあるのですね。
「『リング開き』によって、リングノートを分別廃棄される方が増えていったらいいなと思います」と山村さん。
「COCOCHY（ココチィ）」の開発担当者が使っているノートとは？
ところで細井さんと山村さんは、普段はどんなノートを使っているのですか？
細井：僕は「ポケットクロッキー」です。PCの前に置いても邪魔にならないコンパクトなサイズ感、しっかりとした表紙の厚みが気に入っています。
山村：私も「ポケットクロッキー」を愛用しています。いま使っているのはクリエイターさんとのコラボモデル。理由は細井とまったく一緒です（笑）。しかも「ポケットクロッキー」は軽いので、持ち運びがしやすいんですよ。
右下が細井さんの「ポケットクロッキー」、左上が山村さんの「ポケットクロッキー」です。
細井：僕にとって「COCOCHY（ココチィ）」プロジェクトは、この「ポケットクロッキー」からはじまりました。打ち合わせのメモをとったり、アイデアを書き綴ったり、ともに歩んできたパートナーのような存在ですね。
おふたりとも同じノートをお使いとは。きっとこれからは「COCOCHY（ココチィ）」も新たな仲間として加わるのでしょうね。
「COCOCHY（ココチィ）」はペンケースに入る短い定規でもタテ線が引きやすいよう、中央に5mm間隔でメモリがついています。
文具からはじめるサステナブルな活動を
「COCOCHY（ココチィ）」は、私たちにとって身近な文具からサステナブルな活動を実践できる、新しいジャンルのノートなのだなと感じます。今後、どのような存在になっていってほしいとお考えですか？
細井：「リング開き」付属のリングノートが、リングノートのスタンダードになっていったら嬉しいですね。「リングノートは分別をして廃棄する」という意識が根づけば、環境への意識ももっと高まっていくのではないでしょうか。
山村：FSC®︎認証についても同じことがいえると思います。「COCOCHY（ココチィ）」をきっかけに、「森を守る」という意識や行動が、日常生活へ浸透していったらいいなと。
細井：自然環境の保全へ向けて、暮らしの中でできることはたくさんあります。マルマンとしても常にこの思いを抱き、お客さまの視点に立ちながら、環境への取り組みを継続していきたいと考えています。
「マルマンの『図案スケッチブック』のように、『COCOCHY（ココチィ）』も3世代にわたって愛していただけるようなブランドに育ってほしいですね」と細井さん。
【COCOCHY（ココチィ）製品概要】
製品名：COCOCHY（ココチィ）
価格：A5サイズ242円（税込）、B5サイズ297円（税込）
カラー：全6色（ライトオレンジ、イエロー、ライトグリーン、ライトブルー、ライトパープル、グレー）
内容：本文40枚（リング開き付属）
販売店：全国の文具取り扱い店、マルマン公式オンラインショップ（楽天市場、Yahoo!ショッピング）
- COCOCHY
